極上のマリンテラリウム

2025年7月21日

波をモチーフにした複合曲線が美しい大きな天板。滑らかな曲線の下には作り込まれた岩壁が広がり、左右の洞窟では青と白のLEDライトが差し込む光を演出します。水面の上には吊り下げられた3つのライトが、揺らぎの輪郭を底砂まで届けています。底面にはバックライトを配置し、透明度を増した水中は波紋をダイレクトにサンゴ礁へ投影しています。

高級感漂うアクリル水槽のサイズはW2250mm×D450mm×H600mmと空間に対してベストなボリュームとなりました。循環用のオーバーフロー管は特殊配管で設計され、水槽外側の背面フローボックスへ移設。その効果は水中の美観を損なわない岩組みの自由度を高め、よりリアルなレイアウトを可能にしました。

さらに通常は強度を保つため均等割付けで配置される2本のフランジ(橋)位置も変更し、妥協することなくアクリル幅や厚みを増す特殊設計で中央開口部を900mm確保しました。左右の開口部を475mmと狭めることで、ダイナミックなマリンテラリウムを実現することができました。

背面の特殊造形によるサンゴ礁の岩壁は、特注の専用BOXに格納。白を基調とした石目調のメラミン素材で製作しました。サイズはW2400mm×D250mm×H1000mmと水槽よりさらに大きくなり水景全体を包み込みます。

それらを支える架台は使用例の無いブルーを基調としたモザイクタイルでの施工となりました。

波に揉まれながら長い年月をかけ波打ち際に到達したシーグラス同様に、タイル独特の艶やかな濃淡のある光沢を放ちます。遠目から見ればその焼き物特有の陰影が水槽の一部となり、より一層深みのある水景へと進化させてくれました。

水槽裏手には事務所スペースがあります。そのため背面の加工は3連の額縁デザインでお客様の来店を確認できるようにしました。中央の岩礁はクレパスデザインを取り入れ、正面入り口の様子を水槽越しに見えるようにしました。

また、大きなL型の水槽架台にはシンクが埋め込まれています。すぐ横に水槽があるため額縁下にはお茶出しなどに活用できる隠しテーブルを特注製作しました。

さらに中央の額には脱着可能なアクリルパネル装着させ、背面から見る水槽はまるで趣の違うタワー型水槽をもうひとつ設置したかのような仕上がりとなりました。その水中クレパスを行き交う魚たちを、デスクにいながら楽しむことができるように計算された水景レイアウトとなりました。ろ過槽や機材を収納した架台には雰囲気を変えたデザインで扉を製作しました。100年腐らないとも言われている高級木材のウリンを使用。ウッドデッキなどにも用いられ非常に硬く重いため『鉄の木』とも呼ばれています。東南アジアの現地では海辺に生息している木材のため、熱や湿気はもちろん海水にも耐久性があり架台材としては高級感と実用性を兼ね備えた最適な素材となりました。このような木材のため加工はとても大変ですがクーラー機材の排熱や蒸発に伴う湿気などを排気できるよう、張り合わせは意図的に隙間を空けてのデザイン加工になりました。

その架台下に配置するろ過槽は水槽用クーラーとシンク用の給排水管とL型のコーナーを避け、高さ760mmしか無いスペースでの設置作業となりました。フルオープンの水槽は水の蒸発も早く、そのためろ過槽の水量、深さは最大量を確保しなければなりません。そのため、ろ過槽のサイズは最大有効幅に対し最大のW1300mm×D400mm×H650となり配管の取り回しは困難を極めました。

今回、住宅展示場内にあるエクステリア専門店のショールームで類稀な憩いの空間をご提案することになりました。それはガラスの滝に四季の移ろいを楽しんでいただける水辺に始まり、続くワイド&ロータイプの苔テラリウムの制作は、ふんだんかつ丁寧に配置された植栽を背景に和のテイストを盛り込みました。水を絡めたゾーンディスプレイは四季の彩りを表現する癒しの水景となり、『水辺の水景三部作』のトリを務めたのがこの大型マリンテラリウムでした。