子供たちのために『海』をつくる

2025年7月21日

未就学児をお預かりする施設に『海』をつくって欲しい。
施設を運営する会長、理事長から直々のご相談でした。

早速、現場の責任者にヒアリングを開始。
パーティションのようなちょっとした仕切りが欲しかったので、それが水槽だといいかも・・・
などの設置イメージがでました。
そこで新たな壁を立ち上げることで『埋め込み型のデザインアクアリウムにしては？』との提案に、デザインも含めて任せたいとのご依頼になりました。

施設全体を包み込むアクアリウムの設計プロセス

子供たちのフロア動線を最終確認した上で、事務スペースが入り口から直接見えなくなるよう、アクアリウムの間仕切りによるクローズドな空間作りをベースにした設置案を採用していただきました。
しかし完全に閉じるのではなく、水槽上部にはブリッジ型のライティングボックスを製作。
ブリッジ加工は圧迫感を軽減するための上下の抜け感を残しつつ、ライトなどの余計なものに直接目がいかない効果を得られます。
また、2種類のLEDライトは独立したボックス内にその光源を格納し、子供たちがステージ上から水槽を見上げても眩しく無いように格子状のカバーを装着しました。

コーナーカバーを装着したアクリル水槽の本体はオーバーフローでのオーダー製作になりました。
幅1500×奥行400×高さ600mmの大型水槽です。

オーダーメイドによる家具調専用架台、水槽の背後には魚たちを包み込むような特殊造形のサンゴ礁、これらを有する『プレミアムマリン』仕様で水景制作をすることになりました。
その空間に合わせデザインされたすべての造形物は、希少価値の高い高級魚たちの優美な姿を際立たせてくれています。

見る・遊ぶ・学ぶ：子どもたちの体験を育む水槽ステージ

水槽を支える、壁一体型の架台は幅2010×奥行750×高さ1000mmです。
さらに前面には小上がりのステージと横窓から水中を覗き込むための踏み台を一体型で併設することになりました。
強度を増すため架台と一体構造でステージを製作し、コーナーガードや緩衝マットを常設することで安全確保をしています。
魚たちをより近くで見るために登ったり降りたり、子供たちも良い運動になっているそうです。
その正面パネルには木材の魚たちを集合させ、つかまり立ちに最適なレイアウトでお魚広場を作りました。

ハンドメイドで切り出したAJオリジナルデザインの木製サンゴを中央に据え、無塗装仕上げの国産材4樹種を用いた『海のいきものつみき』（オークヴィレッジ社製）を贅沢にディスプレイしています。
安心な丸みを帯びた形状の魚たちは小さな手でも握りやすく、髪の毛ほどの細い糸ノコで一つ一つ削り出し、面取り、ヤスリがけなどの工程を丁寧な手作業で行ったものを使用しています。

また、裏面の袖壁にはスタッフさんのために大容量の一体型収納を製作しました。
収納物の大きさで棚の位置を変えられる仕様になっています。
収納用扉は子供たちの手が届かない位置に取っ手を取り付けました。

ろ過槽やクーラー等の機材を収納している水槽下の扉はメッシュ加工で通気を確保し、クーラーのオーバーヒート予防と同時に、電気系統も集中しているため子供の手が入らないような仕様になっています。
さらに安全面を考慮し、各扉には専用の鍵も設置しました。

造形サンゴによる特別な海中風景

水槽背面には『魅惑のサンゴ礁』のディスプレイエリアがあります。
正面から見る水中世界をより神秘的かつ深みのあるものにしています。
(※特殊造形サンゴ礁は受注生産になり、ハンドメイドによる一点物のため制作にお時間をいただいています)
また、背面からの観賞には趣の違う水景を楽しんでいただけるよう、額縁をオーダー製作しました。